研究開発テーマ


深層学習による認知障害リスクAI判定法

生活習慣病による動脈硬化は虚血性心疾患や脳血管障害だけでなく血管性認知障害(Vascular Cognitive Impairment; VCI)として認知症の発症の引き金になる。脳動脈硬化によるVCIは、血管性認知症だけでなくアルツハイマー病の発症にも関与し、軽度認知障害(MCI)から重度認知症に至る幅広い認知障害において重要な役割を果たしている。健診で用いる一般血液生化学検査データは、VCIの原因となる生活習慣病や内臓機能障害を反映しており、この血液データに基づいて、人工知能(AI)のアルゴリズムである深層学習(Deep Learning)を応用し、認知機能(mini-mental state examination: MMSE)を予測するアルゴリズムを開発した(特開2018-055333)。認知症と全身性障害との関係 認知症は脳の高次脳機能障害であるが、全身性障害により発症すると考えられている。

認知症と全身性障害との関係 認知症は脳の高次脳機能障害であるが、全身性障害により発症すると考えられている。すなわち、生活習慣病に起因する脳動脈硬化による脳循環障害、栄養障害や貧血などの代謝障害が認知症発症のトリガーや認知症のリスクになる。


IoT-健康管理システム

モノとインターネットを繋げるInternet of Things(IoT)や人工知能(AI)などの先端的情報通信技術を活用したデジタルヘルス。センサー技術により身体機能と脳機能を測定し、インターネットによりクラウド上に個人の健康履歴(Personal Health Record、PHR)としてビッグデータを構築し、AIにより健康状態を遠隔で集中管理するシステム。スポーツジムなどの非医療施設に設置し、日常的に健康管理を行う。医療現場の負担を軽減し、医療費を抑制する新たな医療プロセスに貢献。

タッチパネル式PCを操作することにより半自動的に血圧、体重、脳機能(NIRSによる安静時前頭前野活動の計測)を日常的に計測することができる。データはクラウドにPHR(Personal Health Record)として蓄積され、AIにより健康状態を判定する。健康運動指導士がAIによる健康評価を説明する。


 

IoT健康管理システムを(公財)郡山市健康振興財団付属フィットネスジムに設置し、社会実装研究を行っている。 被験者(116人、 69.0±7.5歳)はジム内に設置されたIoT健康管理システムを用いて、1)血圧計測、2)脳機能計測、3)体重計測を実施した。最初にシステムの使用法について係員からインストラクションを受けるが、その後はNIRS計測も含め自分たちで計測した。


 

運動を長期的(6ヶ月間)に行うことにより、血圧(収縮期血圧、平均血圧)が有意に減少した(左図)。さらに前頭前野の安静時活動パターンも右優位のストレス脳から左優位のリラックスる脳に変化した(右図)。


次世代地域包括ケアシステム

睡眠センサや脳血流センサなどにより高齢者の日常生活および健康情報を測定・集約し、科学的エビデンスに基づいて未病診療の効果、ストレスや認知機能の見える化技術を評価、検討、改善、実証を安全に循環できるIoT、BD、AI基板を整備し、健康寿命の延命、日常生活支援、産業創出に繋げる地域モデルの確立を目的とする。

次世代地域包括ケアシステム実証研究の概略図。各家庭に設置した睡眠センサーにより睡眠時の呼吸、心拍、体動、離床をモニタリングし、クラウドにPHRとして蓄積し、AIで解析する。また、定期的に地域の集会場に集まり、健康教室を開催し、脳機能計測による認知症やストレスの評価を行う。(2015年4月~現在: 2020年4月よりさらに1年継続)


睡眠センサーによる心拍(青線)、呼吸(赤線)のモニタリング例(縦軸は回数/分、横軸は時間) 熟睡例では就寝後、心拍、呼吸は安定しており、離床も見られない(上段)。一方、不眠例では心拍、呼吸は不安定であり、何度も離床している(下段)